本書の存在は、かなり前から存じ上げておりました。
しかしながら、絶版状態が続いており、手を出せずにおりました。
そのアイテムが、3年ほど前、版元を変えて文庫化されていたのを知ったのは、恥ずかしながら、今夏のことでした。
日本ラグビー界が誇る巨匠、早稲田大学・大西鐡之祐先生の名著と誉れ高い名著です。
一読して、驚きました。
これは、スポーツという枠を超えた、教育学、いや人間学の哲学書とも言えるのではないでしょうか!
いや、人前でスポーツを語るなら、必読とも言えるアイテムですね。
そして、早稲田大学という学び舎の懐の深さを思い知らされる書でもあります。
ホイジンガ、クーベルタン辺りの歴史家、教育者から始まり、プラトン、アリストテレス、ジョン・デューイ、ダーウィン、ペスタロッチ、カント、トマス・ホッブス、ジョン・ロック、アダム・スミス、ハイデッガー、ゴッホ、ニーチェ、カミュ、トフラー等々(キリが無いのでこれくらいで)、名だたる哲人・著名人の思想が紹介され、教養の塊といった様相です。
その一方で、西洋思想のみならず、達磨大師、道元、臨済義玄等、禅への傾倒も垣間見え(こちらは、対談(鼎談)者と想われますが)、十牛図、果ては阿頼耶識の領域にも迫る勢いです!
その上、「愚管抄」、「大鏡」、「平家物語」等、歴史叙述のみならず、山鹿素行、忠臣蔵等、日本人が培ってきたマインドにも広く言及されています。
早稲田OBを名乗るなら、必読書だと思われますが、校友の皆さん、如何でしょうか!
☆入学を許されなかった輩の戯言と受け止められても仕方ありませんが・・・自爆
それにしても、これがスポーツ、特にラグビー・フットボールに関する考察なのですから・・・
そして、哲学書と申し上げたのは、帯に記載された岡ちゃん(サッカー日本代表元監督岡田武史氏・・・この方も早稲田OBですね)の推薦文に書いてあるからというわけではありません。
フェアプレイ、アマチュアリズム、勝つことの意味、ピューリタニズム、ジェントルマンシップ、プラグマティズム、イデオロギー・・・
こちらもキリがありませんね(苦笑)。
それでは、本コラムを〆る前に、グッとくる箇所をお裾分けしておきますね。
私がスポーツにおける闘争を教育上一番重要視するのは、たとえばラグビーで今この敵の頭を蹴っていったならば勝てるというような場合、ちょっと待て、それはきたないことだ、と二律背反の心の葛藤を自分でコントロールできること、これがスポーツの最高の教育的価値ではないかと考えるからである。こうした闘争における心の葛藤をコントロールする訓練の積み重ねによって、こういうことを行ってはいけないとか、行ってもよいという、判断によらないで、パッとそのとき瞬間に正しく行為出来ることが重要ではないか、と考える。<p39-40>
人間の持っている合理的な行動と非合理的な行動という、二つのものをコントロールしていく力を育てるものがスポーツのなかにある。それは体験的に積み重ねていくなかで成長していくものであって、ただ考えているだけでは決して身につかない。<p281>
何はともあれ、チャンスがあれば、是非とも手に取っていただきたい至宝です。
老婆心ながら、文庫といえど、解説文含め650ページ超、背の厚みは3㎝に達することを心得ていただいた上で、臨まれることをオススメいたしますが・・・笑
ではでは。
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