本日は著者の生誕100周年の節目ということで、コチラのアイテムを紹介します
昨年の同日にも実践読書術のテキストに活用していたようですが・・・笑笑
『神々の体系 深層文化の試掘』
『続・神々の体系 記紀神話の政治的背景』
上山春平 著 中公新書
「記紀」というコトバを目にして、何のことか直ぐ分かる方は、日本人でも少数派かもしれません
「記紀」とは、わが国最古の歴史書「古事記」と最古の正史「日本書紀」の総称
いずれも、奈良時代の初期に編纂されました
昨年2020年は「日本書紀」編纂1,300年ということで、コチラでもコネタにしていましたね
https://books.view.cafe/liberal/694/
そして、今回のアイテムは、「記紀」に向き合うのであれば、その前に読んでおきたい良書と断言しておきます
「古事記」(全三巻)の上巻は天地の創生から神々の物語、中巻・下巻は初代神武天皇にはじまる天皇の歴史(第33代推古天皇まで)がまとめられています
上山春平さんは、『神々の体系』の第一章「古事記神統譜」の構成ということで、最初になり出でる神アメノミナカヌシを共通始点としてから二系統に分かれ、初代神武天皇(イハレヒコ)で共通の終点として神々の系譜をシンメトリックに表現しています
高天の原系(天、陽)
タカミムスビ ⇒ イザナギ ⇒ アマテラス ⇒ ニニギ
根の国系(地、陰)
カミムスビ ⇒ イザナミ ⇒ スサノヲ ⇒ オオクニヌシ
「古事記」を未読の方は、
・イザナギ、イザナミの二柱は、国生みの神
・アマテラス、スサノヲは、姉(皇祖神)弟
・ニニギは、天孫降臨神話(アマテラスの孫)
・オオクニヌシは、天孫降臨前の国造りの主役
・初代神武天皇(イワレヒコ)は、ニニギの曾孫
ということだけ押さえておきましょう・・・笑笑
上山春平さんは、このシンメトリックな着想から、当時の東アジア情勢にも言及した上で、日本という国が、古代以来、藤原レジーム(藤原氏独裁体制)で進んでいくことを暴き出していきます
その中心人物であり、創始者は藤原不比等
『続・神々の体系』では、その藤原不比等ならびに藤原氏に関する論考を中心に展開し、「記紀」は天皇家のためというよりはむしろ藤原氏のために編纂されたと主張しています
ちなみに、「記紀」の「紀」である「日本書紀」の本文には、アメノミナカヌシは登場しませんので(一書に曰くとして紹介されています)、その論旨はかなり「古事記」よりになっていることを申し添えておきますが、いずれにしても、藤原不比等がカタチ作った体系が明治維新まで脈々と続いていたとは、そのグランド・デザイン能力の凄さに驚くばかりです
そして、実は今こそ、不比等のグランド・デザインを検証し、そのあり方について、国民一人ひとりが考えるタイミングなのではと想ったりしますが、そんな兆しはまったく感じられませんので、このまま出たとこ勝負で天皇制を継続することになるのでしょう・・・涙
上山春平さんは、この後、
『埋もれた巨像 国家論の試み』 岩波書店
で持論を集大成的に描かれていますが、ご興味ある方は是非そちらも手に採って向き合っていただけると良いかと存じます
コチラでは、中国の正史「史記」との比較も用いながら、どちらかというと「日本書紀」をメインに採り上げて論旨が展開されますので、併せ読みがオススメです
日本に暮らす人間として知っておくべき最低限の教養ではないかというのは乱暴かもしれませんが、上山春平さんの著書に触れることで、この国の成り立ちを押さえておくことは、近い将来直面するであろう大変革に対する心構えとしても大切だと感じます
今回もお役に立てれば幸いです
ではでは
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